“QRコード”を絵画の素材にしたマルチ・アーティスト

美山 深 FUKASHI MIYAMA
バイオリンコンサートでの新作発表

 

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 4月27日の夕刻、東京都練馬区大泉学園の古書店・ポラン書房で、バイオリンのコンサートが行われた。小さな古書店の書籍に囲まれた店内に椅子を並べた、アットホームな雰囲気の中で、美山深のバイオリンが響いた。新日本フィル・ハーモニー交響楽団の第1バイオリンを務めていた美山は、クライスラーの「愛の喜び」など、親しみやすい曲を披露した。という音楽家の顔は、美山のひとつの側面にすぎない。

美山 深(ミヤマ フカシ)
Fukashi Miyama
  • 福岡県久留米市出身 AB型
    1953年(昭和28年)10月10日生まれ
  • バイオリン製作・バイオリニスト・画家・料理人・フォトグラファーとして幅広く活躍している。母方の縁者に洋画家の坂本繁二郎がいる。

  • 〒178-0061
  • 東京都練馬区大泉学園町1-13-29
  • TEL 03-3867-8771
  • FAX 03-3867-6161
  • 携帯 090-3965-3401
  • ARTIST Mr.FUKASHI MIYAMA
  • 1-13-29, OHIZUMIGAKUEN-CHO, 178-0061
  • NERIMA-KU, TOKYO JAPAN
  • Phone : 03-3867-8771
  • FAX : 03-3867-6161
  • Mobile : 090-3965-3401
幼少のころからバイオリンを学び、武蔵野音楽大学に進学し、オーケストラの奏者として活動してきたプロ中のプロに違いないが、古本屋の店内には、美山のタブロー作品も展示されていた。彼は10回以上の個展歴やさまざまなテーマのグループ展への出品など、相当な発表活動を行っているいる画家の顔も持っている。今回の演奏の合間にも自身の絵画作品の新作についての話をしている。そこでは「QRコード」という単語が何度も登場した。  画家だけでなく、カメラマン、バイオリン製作者、調理師という顔もある。つまりはマルチ・アーティストと呼ぶにふさわしい多様な活動をしている。

 だが、今回は画家としての角度から紹介すると、現在、美山深は、まったく新しい絵画を制作している。新しい表現方法やイズムを起こしているという抽象的なことではなく(結果的には新しいイズムに繋がるかもしれないが)絵画の中に「QRコード」を描き、作品を見るだけでなく、具体的に、他の情報媒体に繋がっていける絵画を考案した。「QRコード」とは、バーコードより小さい正方形の二次元コードで、携帯などで識別してインターネットにアクセスするときによく使われるもの。今では、広告やさまざまな印刷物に付けられているから、知っている人には無駄な説明になるが、バーコードをいくつも重ね、より大量の報量が収められるマトリックス方式に進化した新しいコードのことだ。  美山深の作品の中に、そのQRコードが描かれている。
「けっこう時間がかかりましたよ。描いてから実際に読み取れるかどうか試してみて、何回も描きなおしましたから」  と、美山は真剣な表情で話す。

 アトリエでは実際に描いたQRコードを携帯電話で読み取れるかどうか試しながら、作品制作を進めているのだろう。しかし、キャンバスに手描きでQRコードを描いたからと言って、それが絵になるのだろうか。コンセプチュアルアートのように、それをキャンバスに描くことに何らかの意味があるというような、理屈で強引に納得させようという考えは美山自身にはないだろう。色彩の明るい豊かな広がりを持つ抽象作品で、観る者の気持ちを楽しくしてくれるような作品を発表してきた画家にとっては、そうした方向性はないはずだ。

 通常よく見るQRコードはモノクロで印刷されているが、そこに色を使ってもQRコードを読み取るという意味では問題がないらしい。つまりQRコードを色彩のある絵の一部として扱うことも可能だということになる。あるいはバックに絵が描いてあっても、読み取りに支障をきたさないようなものなら、それは依然としてQRコードとして機能する。そうした技術的な問題をクリアして、QRコードが美山の絵画要素の一部となった新しい作品が制作された。  それは今まで美山が描いてきた抽象絵画に、QRコードの抽象図形がプラスされたということだけではなく、その作品のQRコードを携帯電話などで識別すれば、そこから別の情報が得られるサイトに飛んでいけるという、絵画プラスQRコードをもった多重媒体としての作品が誕生したということになる。

 この新しい絵画は、まだ美山が試行錯誤して、さまざまな可能性を追求し始めたところなので、現在は、作家のプロフィールや作品解説などのサイトに繋がるということに留まっているが、まだまだ可能性は広がっていくことだろう。  美術のベーシックな表現として絵画は絵画として長い歴史を刻んできたが、そこにQRコードが描かれて、まったく別の機能も持つという進化を、美山深は実現させた。それが作品としてどのように展開されていくかは、また別の問題だが、マルチ・アーティストとして、さまざまなジャンルに翔たいていく美山ならではの、軽やかな発見でもあるのだろう。伝統的な絵画がITの世界に接続されるという、まさにユニークな世界が展開されようとしている。
(月刊ギャラリー2008年4月号より)